11月号

鶴永武久の

経営税務コラム

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平成16年10月20日

増税は、みんなが知らないうちに!

 今年もそろそろ来年度の税制改正の案が出てきています。消費税率のアップはまだまだ先のようですが、やはり、来年も増税傾向は続きそうです。それも弱者に対する増税です。

 現在、検討課題になっている改正事項で、皆さんに関係がありそうなものは、所得税・住民税の定率減税の縮小廃止案。それと退職所得控除の廃止縮小です。

 定率減税は、1999年の小渕内閣の時に導入されたもので、所得税のうち20%(最高25万円)、住民税15%(最高4万円)を減額するものです。
これが廃止されるとほとんどの人は所得税が20%アップする事になります。住民税まで入れるともう少し税金が上がります。
 具体的な金額で計算してみます。

 例えば、年収800万円のサラリーマンについて見てみましょう。給与所得者ですから給与所得控除は200万円となります。所得控除を150万円とすると課税される金額は、800万円−200万円−150万円=450万円になります。この450万円に対する所得税は、57万円になります。57万円×20%=11.4万円が所得税の増税となります。住民税は、所得控除等が若干違いますが、課税所得が450万円とすると35万円となります。35万円×15%=5.25万円>4万円ですので、4万円の増税となります。
所得税・住民税併せて15.4万円もの増税となります。  
配偶者特別控除は、すでに廃止が決まっており結構な額の増税となります。おまけに厚生年金の負担も毎年増えてきます。

退職所得控除の廃止は、サラリーマンにとっては大きな問題です。
 30年勤務し、2,000万円の退職金をもらった場合を検討してみましょう。
 退職所得控除額は、800万円+70万円×10年=1,500万円になります。退職金に対する税金は、(2,000万円−1,500万円)÷2=250万円。250万円×10%=25万円となります。


 

 
では、退職所得控除が廃しされたらどうなるのでしょうか?

2,000万円÷2×30%-123万円=177万円となり、税金は一挙に7倍になることになります。

退職所得控除の廃止の理由は、最近は転職も多くなり、実質的に終身雇用の考え方は当てはまらない。よって、退職所得控除もいらないという事らしい。

しかし、退職所得控除が廃止されれば、今後、退職金をもらって退職する人にとっては、老後の資金が減ってしまいます。これは大きな問題です。

財政の不足により、増税も致し方ないのかもしれませんが、大きな方向性が、増税傾向であり、簡単に取れるところから取るというような安易な考えでいるような気がします。

 消費税の税率を上げる事は、社会的な問題になりますが、定率減税を廃止する事はあまり社会の注目を浴びません。
 先ほどの例で800万円の年収のサラリーマン世帯での増税額15.4万円は、5%の消費税を負担したとすると308万円の買い物をした事になります。年間308万円の買い物をしていた人が、消費税を5%から10%に倍額増税した金額と同じ増税という事になります。 ほとんど騒がれずに、このような増税が行われようとしています。

毎年、思うのですが私の目から見ると結構な額の増税が行われていても、社会的にはほとんど騒がれない。年金や消費税と同等以上に毎年の税制改正は騒がれてイイと思うのですが?特にマスコミがもう少し関心を持つとイイと思います。

 寛大な気持ちで増税に耐えるとしても、その使い道をしっかりしてもらいたいとも思います。

皆さんももう少し税制改正には関心を持つとイイと思いますよ。
 
                          以上