4月号

鶴永武久の

経営税務コラム

鶴永税理士事務所/会計事務所

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平成16年3月20日

土地建物の売却にかかる譲渡所得税の改正の話。今年の1月1日以降に適用されます。

まずは、いい話から。

  今回の改正では、長期所有(5年超)の土地・建物の譲渡をした場合の所得税率は、26%(住民税を含む)から20%に減額されました。
 過去最高は39%でした。その税率が約半分になったことになります。
 相続でもらった土地や古くから持っている土地を売却し、利益が出た場合には20%の税金ですみます。
 この減税は、本当に大きいと思います。 利益の出る土地等の売却が進むかもしれません。そして、土地等の値段が低くなる要因ともなります。

次に、悪い話です。とんでもないことが起こりました。

 なんと土地・建物を売却した場合の損失を他の所得と差引き(これを損益通算という)できなくなりました。

 この話は、晴天のへきれきです。
去年の12月17日、突然、税制改正大綱として発表されました。それもほとんど議論されずに出てきました。

 適用は、平成16年1月1日です。大綱発表からわずか10日しかありません。年末にあわてて土地の譲渡ができるはずがありません。
大綱とは、まだ正式に決定されていない状態です。決定されるのは平成16年3月の国会通過後となります。国会で可決されて、その後1月1日に遡及して適用となります。

 これは、国民をだまし討ちにするようなもの。こんな事がまかり通って良いのでしょうか?これは大変なことです。

 バブル崩壊から12年以上が経過しました。ほとんどの方が、含み損のある不動産を所有しています。
 所有している不動産を売却し、損失が出た場合には、勤労所得である給与所得などと通算し、所得税の還付または減額ができました。
 購入した不動産が値下がりした分せめて税金だけでも戻すことができたのです。今回の改正でそれをできなくなりました。


 

例えば5000万円で購入した不動産を3500万円で売却した。給与所得などの課税所得が2000万円の場合で、所得税を720万円支払っているとします。
この不動産の売却による損失1500万円は、給与等と通算し、課税所得は500万円となり、500万円に対する税金100万円を控除した620万円は、戻ってくることになります。
 これは、不動産で1500万円損した分、税金で620万円取り戻すことになります。今後は、取り戻す金額がゼロになるということです。
 極端な例をあげましたが、不動産の下落幅は大きく、1000万円くらいの損は当たり前です。税金で100万や200万の減額ができる人は、いくらでもいます。
これでは、損失が出る不動産の売却は、できないことになります。
 
 この改正は、国民に考える時間を与えないで、いきなりの改正と言うことになりました。
 
 我々税理士・会計士業界でも大きな問題となっています。今後、どのような結論になるのか注目されます。

 税制は、大変難しく、国民は何が起こっているのかよくわからない状況での改正が多くあります。
 しかしながら、今回のような大変インパクトのある、誰にでも関係のあるような改正は、もっとマスコミでも取り上げ議論する必要があると思います。
 我々プロですら晴天のへきれきなのですから、一般の方は、何のことだか全く理解しないで改正されているのです。

 自宅を売却した場合の特例はありますが、今まで、無条件で損益通算できたものができなくなると個人の住宅の買い換えも難しくなります。

 いずれにいたしましても、税制が社会に与える影響は、非常に大きいことになります。

 税制改正でも広く社会に影響を与え、各人の生活に直結することには、興味を示し、理解し、今後の生活をする必要があるようです。
広く増税、特定の人に減税の傾向は続きます。貧富の差も増してくるように思います。知識をもって、トレンドに乗るようにしなければなりません。
                           以上